タイムズカーレンタル / 2016.12~ トヨタ・C-HR S (DAA-ZYX10)


主要諸元

型式:DAA-ZYX10-AHXNB
トランスミッション:無段式電気変速機
全長:4,360mm
全幅:1,795mm
全高:1,550mm
ホイールベース:2,640mm
車両重量:1,440kg
車両総重量:1,715kg
エンジン型式:2ZR-FXE
エンジン種類:直列4気筒DOHC16バルブVVT-iアトキンソンサイクル
総排気量:1,797cc
圧縮比:13.0
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:43L
最高出力:98PS/5,200rpm
最大トルク:14.5kgf・m/3,600rpm
モーター型式:1NM
モーター種類:交流同期電動機
モーター最高出力:72PS
モーター最大トルク:16.6kgf・m
JC08モード燃費:30.2km/l
最小回転半径:5.2m
装着タイヤ:215/60R17 96H TOYOトランパスMPZ
ホイール:17*6.5Jアルミホイール
サスペンション:マクファーソンストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:ベンチレーテッドディスク/ディスク
メーカー希望小売価格:2,646,000-


一昨年12月に登場したトヨタのコンパクトクロスオーバーSUV、C-HR。
やや旬が過ぎた感も否めませんが、タイムズカーレンタルでハイブリッドモデルのベースグレードS(FF/CVT)をレンタルし、およそ900km走行しました。


豊田章男社長掲げる、トヨタの「新しいクルマづくり」のスローガンのもと投入された、「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ」(TNGA)と呼ばれる新しいプラットフォームを用いて作られた第二弾がこのC-HR。
第一弾のプリウス(50系)とプラットフォームや動力ユニット等を共有するも、ホイールベースが60mm短縮されるなど、また異なったキャラクターとなっています。


日本ではホンダ・ヴェゼルを筆頭に、短期間でひしひしと存在感を増してきたコンパクトクロスオーバーSUVというカテゴリーは、世界的にも盛り上がりを見せています。
既述のホンダ・ヴェゼル、日産・ジューク、マツダ・CX-3、スバル・XVと出揃っている中、国産メーカーとしては最後発となったC-HR。
キーンルックやアンダープライオリティといった最新のトヨタのデザイン言語を取り入れるだけでなく、幾多の面を立体的に構成したエクステリアは、アメリカ人デザイナーによって手がけられたもので、ほぼラフスケッチのままのスタイリングを実現したのだとか。
後述しますが、この複雑で独創的なデザインを追求したことによって犠牲となった部分もありました。


今回は既述の通り、1.8Lエンジン+モーターのハイブリッド「S」が配車されました。
C-HRのグレード体系は、ベースグレードのS、上級グレードのGがあり、それぞれにハイブリッドとターボの設定があります。
ベースグレードでありながら、17インチアルミホイール、本革巻ステアリングホイール、前席デュアルエアコンなど、装備は充実。
ボディカラーは専用色のメタルストリームメタリック(1K0)
陰影がはっきりとして、まさにC-HRにピッタリのカラーです。

平成29年7月登録、出発時ちょうどODOメーターは2万kmを指していました。
気温15~20℃の晴天の中、大人1~2名乗車で904km走行しました。

エンジン・トランスミッション


エンジンルームにはプリウス(50系)と同じTHS-Ⅱが搭載されています。
2ZR-FXEエンジンに最新世代の1NMモーターを組み合わせたもの。
この最新世代の1NMモーターは、従来のプリウス(30系)に搭載されていた1JMモーターよりも10PS、5kgf・mほど出力が低くなっています。
エンジンはプリウス(30系)から大きく変更されていないため、結果として僅かながらシステム出力は劣ることに。
モーターの変更によって非力さを感じることはありませんでしたが、反面、プリウス(30系)のような「意外と走るな」という軽やかさも失っており残念。
しかし70km/hでもモーターのみで走行できるのは立派です。
THS-Ⅱと組み合わされる電気式無段変速機はもはや完成の域に達しているのでは、というほどにリニアで申し分ありません。
C-HRの静粛性の高さも相まって、モーター走行からのエンジン始動時のノイズやショックもずいぶん軽減されている印象でした。

足回り・剛性感


Sグレードは215/60R17インチタイヤに6.5J17インチホイールが標準装備。
新車装着タイヤはBSかMHのようですが、TYトランパスを履いていました。
ミニバン専用タイヤとして定評のあるトランパスMPZですが、ややロードノイズは大きめ。
18インチを履くGグレードは、ポテンザRE-050Aを履いて納車されることもあるそうです。


サスペンションはフロントマクファーソンストラット、リアダブルウィッシュボーンと、四輪独立懸架で前後スタビライザー付き。
リアのショックにはドイツザックス社製のものが採用されているのも注目すべき点のひとつです。
SUVということで重心の高さが気になりますが、そんな心配を完全に払拭してくれるほど高い接地感を誇ります。
ボディ剛性も高いレベルにあり、高速域での旋回も恐怖感はありません。
アンジュレーションにも柔軟に対応できており、ショックが仕事している証です。
ただ、大きなバンプには弱い印象。
ハンドルが軽いのも好き嫌いが分かれそうです。

見かけによらず運動性能が高いゆえに、ブレーキの甘さが非常に残念でした。
回生ブレーキの独特なタッチはともかく、完全停車には深いストロークを有しやや使いづらいブレーキは改善の余地がありそうです。

インテリア・コックピット


Sグレードの内装色はブラック。シート表皮はファブリックです。
アクアGR SPORTのように、ルーフの内張りやバイザーまでブラックで統一されており、精悍な印象。
C-HRのデザインテーマである「ダイヤモンド」は、ルーフの内張りにまであしらわれています。


ファブリック表皮のドライバーズシート、ホールド性はまずまず。
ステアリングホイールは専用設計でしょうか。
本皮巻きで適度に滑り、握っていて気持ちの良いハンドルです。
フットレストの角度がキツめなのがやや気になりました。


2眼筒型メーターは奥行きがあり、昼夜問わず視認性も確保されています。
メーター中央には、近年のトヨタ車にはほぼ必ずと言っていいほど装備されているマルチインフォメーションディスプレイを搭載。
ステアリングスイッチでの操作となりますが、自然な挙動で使いやすいです。
しかし走行モードの切り替えもステアリングスイッチを操作して、マルチインフォメーションディスプレイ上で確認しなければならないのは少し煩雑に感じました。
プリウス(30系)などはセンターコンソールにパワーモードスイッチがあるだけに、C-HRも走行モードについては物理スイッチを配置しても良かったのでは。


エアコンスイッチは運転席側を向いており、ナビもオフセットして搭載されています。
C-HRはあえて流行には乗らず、操作性を重視した物理スイッチを採用。
近年のトヨタのトレンドであるブルーイルミネーションはよく似合っていますが、C-HRのようなオシャレに特化した車だからこそ、静電気式スイッチの方がより質感も向上したのでは…?
慣れてしまえば物理スイッチも静電気式スイッチも操作性は大差ないように思えます。

リアシート・ラゲッジルーム


セリカを意識して開発された、いわば2+2クーペとも言えるC-HRのリアシートはあくまで非常用。
今回は最大で2名乗車だったため、不便を感じる場面はありませんでした。
しかし非常用としながらもルーフ高は余裕があり、足元のスペースも全長4.4m弱の車としては狭く感じますが、ヴィッツ(130系)と同等かそれ以上は確保されているように思えます。
ベルトラインが高くリアウィンドウの面積が狭いため、圧迫感はあるようです。
細かい部分ながらシートバックポケットが無いのは地味に不便。
Gグレードのシートにはポケットがついているようです。


ラゲッジルームはボディサイズ相応でしょうか。
画像はありませんが、最近では当たり前となったアンダーラゲッジスペースはもちろん、タイヤハウス付近のスペースもフタ付きのラゲッジスペースとなっています。
ワンタッチでリアシートを倒し、ラゲッジルームを拡大することもできるので、よほど大きな物で無い限りは積載可能です。

エクステリア


プリウスの血を引いているだけに、トライアングルシルエットも健在。
プレスラインも複雑に入っており、目を凝らして見れば空力を考えてデザインされていることが分かります。
ホイールアーチやバンパー下部は樹脂製のパーツが用いられており、しっかり手入れしないとすぐに白くボケてしまいそうですね。


2+2クーペと呼ぶに相応しい、隠されたリアドアハンドル。
上部がブラックアウトされ、サイドウィンドウからリアウィンドウへとあたかも繋がっているかのようなデザインです。
やや高い位置にあるリアドアハンドルですが、車の全高自体がそれほど高くないため、あまり不便を感じることはありませんでした。


大きく張り出したリアコンビネーションランプは、見れば見るほど立体感に驚かされます。
リアフェンダー後ろの張り出しも、空力パーツなのでしょうか。

トヨタセーフティセンスP


C-HRは全車に衝突回避支援パッケージであるトヨタセーフティセンスPが標準装備されています。
単眼カメラとミリ波レーダーを用いる、
・プリクラッシュセーフティシステム
・レーダークルーズコントロール
・レーンディパーチャーアラート
・オートマチックハイビーム
以上4つの機能がパッケージとして装備されています。
しかし実は、トヨタセーフティセンスPの機能強化版である第二世代版トヨタセーフティセンスを、先日ヴェルファイア(30系後期)で一足先に経験しており、順番が前後してしまうことに…。

第二世代版トヨタセーフティセンスの目玉は、レーダークルーズコントロールに付随してハンドル操作もサポートしてくれるレーントレーシングアシストが盛り込まれたことでしょうか。
トヨタセーフティセンスPでは車線を逸脱した際にアラームでお知らせしてくれるレーンディパーチャーアラートはついていますが、ハンドル操作への介入は行われません。
人間一度ぬるま湯に浸かると戻れなくなるといいますが、1ヶ月ほど前に第二世代版トヨタセーフティセンスを経験した後だっただけに、レーントレーシングアシストの有り難みを痛感しました。
おそらくマイナーチェンジでC-HRも第二世代版トヨタセーフティセンスへとアップグレードされるのではないかと思っております。

C-HRといえばトヨタ車初採用のシーケンシャルターンランプ、いわゆる流れるウインカーの代名詞的存在でもありますが、残念ながらGグレードのみのメーカーオプションです。
SグレードはLEDポジションランプとハロゲンランプの組み合わせだけでしたが、昨年11月に特別仕様車LEDエディションが発表され、晴れてSグレードでも流れるウインカーを装備することができるようになりました。
ちなみに流れるのはフロントだけです。

総評


さて、やや旬が過ぎたC-HRではありますが、3日間で900kmみっちりと楽しむことができました。
既述のデザインによって犠牲となった部分は、リアシートの居住性や乗降性もありますが、一番は死角の多さかと思います。
運転していると接地感の高さからか背の低い車を運転しているように錯覚することもありますが、全高は立駐ギリギリの1,550mmと決して低くはないため、ドライビング時のアイポイントは高め。
Aピラーは太すぎず、ボンネット、フロントオーバーハング共に短いため前方の視界は悪くなく一見運転しやすいカテゴリーです。


しかしデザインを優先したあまり、左斜め後ろの視界は絶望的です。
自動車学校で習う、いわゆる巻き込み確認の重要性に気付かされることとなりました。
こればっかりはC-HRの欠点でもあり、慣れで解消することのできない唯一の部分です。
左サイドミラーには、ミニバンでよく見かけるサポートミラーがついていますが、私の体格、ドライビングポジションではサイドウィンドウで見切れてしまい、存在すら気づかない程でした。
大袈裟かもしれませんが、交差点左折時には西鉄バスのように横断歩道手前で一度停止し、左右をしっかり確認する必要があるかもしれません。


走行を開始し、日曜日のやや混雑した34号線を中心に100kmほど走行した際にマルチインフォメーションディスプレイに表示された平均燃費は32km/l前後。
その後高速道路を150kmほど走行したことにより23km/l前後まで悪化し、その後一般道、高速道路共に650kmほど走行しましたが25km/l前後で安定しました。
満タン法での計算では22.30km/l。
THS-Ⅱは高速走行ではエンジンだけでの走行となってしまうため、燃費は伸び悩む傾向にありますが、今回は意外にも燃費が伸びなくて少し残念でした。

走行性能は大差ないようですが、機会があれば1.2Lターボにも乗ってみたいです。


参考文献
トヨタ・C-HR - Wikipedia
Toyota Safety Sense - Wikipedia
トヨタ C-HR | トヨタ自動車WEBサイト
c-hr_spec_201708.pdf
【トヨタ C-HR 700km試乗】実用性に欠けるのも「トヨタのねらい通り」…井元康一郎 | レスポンス(Response.jp)

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